「あ、もうすぐ予鈴鳴るからまた次の放課に来ることにするよ」



去り際にクラス中の女子に投げキッスをして消えていった。



それを見た俺は、ゾワァ……と体中に鳥肌がたって、しばらくその気持ち悪い感じが体に残っていた。



その後も宣言通り、よくも飽きずにやって来た麻生先輩。



こうして通ってくるお陰で、変な噂も流れ始めてる。



『麻生先輩が藤沢さんのこと狙ってるらしいよ』


とか



『もしかして、ラブラブと見せかけて倦怠期!?』


とか。



とにかく好き勝手に噂を作ってくれて、かなり迷惑だ。



今日も1日イライラしながら過ごした俺は、昇降口に向かう。



「ヒーロくんっ」



靴を履き換えていた俺を、イライラの原因を作ってる張本人が後ろから呼んできた。



またおかしなことでも言われたら面倒だと無視していたら、



「あれ、聞こえてないのかな? ヒロ君?

ねぇってば。おーい! 聞こえてますかぁ」



無視されてるのをわかってる上で、わざと大きい声で話しかけてきた。



そのお陰で、周りにいる奴らから変な視線を浴びて余計に迷惑だ。



「おかしいなぁ。

ヒロ君はオレより1つ若いのに、耳が遠かったんだ」



「先輩。変なことをわざと大きな声で言うのやめて下さい」



くるりと振り向き様に言うと、この確信犯は悪びれた様子も見せずにニコニコと笑っていた。