「ひゃー。大翔君と藤沢さんラブラブじゃん」
「誰だよ、2人の仲が気まずくなってるなんて言ったの。
松坂のやつマジで羨ましい」
あちこちでヒソヒソと俺達のことを話すクラスメイトに、珍しくこの2人は騒ぎもしなかった。
「まりやちゃんが来ただけで、大翔のピリピリ感どこかにいっちゃったね」
「何だよ。結局こっちが心配するだけ無駄ってことじゃんか。
あー心配して損した。俺は教室戻るわ~」
呆れた様子の祥吾は付き合ってられないと、早々に教室を出ていく。
光もやっぱり本調子じゃないのか、いつもよりも静かでそれ以上は何も言ってこない。
「一気に注目の的だねぇ、お2人さん」
米倉と話をしていた麻生先輩がからかい混じりに俺の席までやってきた。
「誰のせいだと思ってんですか。
先輩は絶対に面白がって毎放課うちのクラスに来てますよね」
「そんなことあるわけないじゃん。
マジメに本気の恋愛について学ばせてもらってますよ」
そう言ってるそばから、クラス中の女子に笑顔を振りまいて、手も振りまくってんじゃねーか。
この人、絶対に根っからの女好きだな。
本気の恋愛知りたいって言ってたけど、ただまりやに近付く口実が欲しかっただけじゃねーのか。
疑いの目を向ける俺に気付いた先輩は、さらに気持ち悪いくらいニコニコしだした。