コソコソと内緒話する光と祥吾だけど、俺には全部筒抜けなことに気付いてない。



自分でもイライラしてんのわかってるけど、まりやが関係してるとどうしても冷静でいられなくなる。



こんな自分に額に手をあてて、思わず溜め息をつきそうになった時。



「ひ、大翔君っ」



可愛らしい声が俺の名前を呼んだ。



「まりや……」



「あの、大丈夫かなって思って。

最近はずっと学校でイライラしてるみたいだから……心配で」



米倉のところに置いてきた麻生先輩の存在を気にしながら、俺の心配をしてくれるまりや。



なんていうか……こいつが持ってる柔らかい空気っつーのか、そういうのに触れると自然と心が落ち着くんだよな。



頭にきてることあっても、まりやといる時はほぐされるっていうか。



眉尻を下げて、心配そうな表情で俺の様子をうかがってくるまりやに、ふぅっと体から力を抜くために息をひとつ吐く。



「大丈夫だから。

心配してくれてありがとな」



不安そうに自分の手をギュッと固く握っているまりやの手に、そっと俺の手を重ねる。



指先から伝わる微かな温もり。



俺が手を重ねたことで、まりやの手から力が自然と抜けていくのを感じた。