そんな心配をしていたら、またとんでもないことを言い出した。



「だからね、オレに本気の恋愛がどういうものかってこと教えてくんない?」



「は……?」



突然の麻生先輩の質問というかお願いに、大翔君は少しの間のあと理解できないという顔をしていた。



もちろん私も麻生先輩が言ったことはまったく意味がわからない。



本気の恋愛がどういうものかって、そんな難しいこと教えてほしいって……。



「嫌ですよ。めんどくせーし」



「ちょっと! 本心を口から出すとか、もう少し気を遣ってくれてもいいんじゃないの。

オレはキミ達より先輩なんだよ」



「こういう時だけ先輩面しないで下さい。

大体、後輩にこんなこと頼んで恥ずかしくないんですか」



「なに恥ずかしいって。

オレそんな感情わかんないもん」



「先輩って……バカなんですか」



な、何だろうこの会話……。



お願い! と手を合わせて大翔君に意味不明なことを頼んでる麻生先輩。



それに「嫌です」「自分で勉強したらどうですか」と繰り返し答え返す大翔君。



まるで、大翔君と宮内君の会話を聞いてるみたいで、思わず笑いそうになる。


「とにかく! これは決定事項だから。

キミ達が嫌だって言っても、オレは勝手に本気の恋愛について勉強させてもらうからね」



そういうと、お弁当箱の中にあった玉子焼きをひょいっと指で掴み、口の中へと放り込む麻生先輩。



大翔君は相手にしなくていいって言ったけど、予測不能なことをしてくる麻生先輩に振り回されそうな気がしてならなかった。