変なことは言ってないと思う。



あの時は、とにかく先輩の元から逃げなきゃって、



家の場所を知られるわけにいかないって必死で……思ったことを口に出したのは覚えてる。



「『大翔君以外受け付けられないから、あきらめて下さい』って言われたの。

付き合ってって女の子に言われてOKの返事しかしたことがないオレが、生まれてはじめて自分から誘ったっていうのに、あんな返事で振る子いるんだって驚きだったよ。

お陰であのあと、しばらく笑いが止まらなくて大変だったんだよね」



また大笑いし始めた麻生先輩に、完全に昨日自分が言ったことを思い出した。



確かに言った。受け付けられないって。



だって本当のことだし、大翔君以外の人を好きになるなんて、私には考えられないことだから。



自分がどう返事したかなんて大翔君に聞かれなかったから言ってなかったし、今聞いて変に思ってたらどうしよう……。



不安になって大翔君を恐る恐る見上げると、私とは反対に顔を向けて口元に手を当ててるから、どんな表情をしているのかわからなかった。



「あ、あの……大翔君？」



「くっ……ははは！」



え、なんで大翔君笑ってるの？



いきなり声をあげて笑い出した大翔君に、私も麻生先輩もポカンとしていた。



こんなに大きな声で大笑いしてるところなんて本当に見たことがなくて、どうしてこんなに笑ってるのかがわからない。



「何なに？　ヒロ君なんか悪いもんでも食べたの？」