「そう思うんなら、自分がいちばんよくわかってんじゃないですか」
大翔君の返事で、昨日のことが原因かとわかったらしい麻生先輩は、何故か上機嫌。
私は、目を合わせることもできなくて、大翔君の方へ体を寄せる。
「あらら。もしかしなくて、オレってまりやちゃんに怖がられてる?」
「身に覚えあるなら、こいつにこれ以上近付くのやめて下さい。
まりやは俺のなんで、手出そうとか思ってんなら、ぶっ飛ばしますよ? センパイ」
さっきまで笑って麻生先輩と話してたはずなのに、今の大翔君の顔には笑顔なんてどこにもない。
谷山君の時も怒ってる姿を何度か見たことはあったけど、それとはまた違う。
いつも優しい大翔君がこんなに怒るのは、私のことだから?
もし違っていたとしも、こんな時なのに不謹慎にも喜ぶ自分がいる。
「ぶっ飛ばすなんて、穏やかじゃないねヒロ君。
そう心配しなくてもね、昨日まりやちゃんに面白いフラれ方をしたんだよね~」
くくく、と思い出し笑いをしながら、私をチラッと見る麻生先輩。
面白いフラれ方……?
まったく覚えのない私は、必死に昨日の出来事を自分の頭の中で再生していた。
「昨日さ、オレがまりやちゃんに付き合わないかってお誘いした時……まりやちゃんオレになんて言ったと思う?」
大翔君に向かって聞いてるんだろうけど、先輩の目は私に向いている。