昨日のことを思い出した私は、また何かされるんじゃないかと不安になり、隣に座っていた大翔君の制服の裾をきゅっと握る。
それにすぐ気付いてくれる大翔君は、私の手を取って握ってくれた。
「おー! 美味そうな弁当だね。
この弁当はまりやちゃんの手作り?」
近付いてくるなり、膝の上に広げていたお弁当に視線を落として、ニコニコと聞いてくる。
キュッと唇を引き結んで黙っている私に、麻生先輩は笑顔を絶やさない。
気まずい……。昨日の今日でどうしてこんなに普通にしていられるのかな。
「まりやちゃんの手作りなら、オレも食べたいな~」
「その弁当……俺がこいつのために作ったやつなんで、欲しいつってもあげないですよ」
お願いをしてくる麻生先輩を遮り、大翔君は横目に睨んでサラッと告げる。
それに対して固まった麻生先輩は、何度か引きつり笑いを浮かべて
「そ、そうなんだ。
ヒロ君が料理得意だったとは意外だね」
「それ褒め言葉として受け取っておきます」
学校であまりニコリともしない大翔君が、珍しく笑って先輩にお礼を言う。
鈍感な私でも、大翔君が麻生先輩に対して怒ってるってことくらい、雰囲気を見ればわかる。
「え、なに? ヒロ君なんか機嫌悪くない?」