「麻生先輩?」



少し雰囲気が違う先輩に声をかけると、目の前にいる私に焦点を合わせて、慌てて笑顔を作る。



「あ、ごめんごめん。

まりやちゃんみたいに可愛い子はなかなか出会えないから、オレってば柄にもなく緊張してるのかもね。

ね、家ってどの辺り?」



「えっ?」



家って、私の家……だよね?



これって本当に私の家まで送ろうとしてる?



先輩の気持ちは有難いけど、血の気が引く思いがした。



家まで送ってもらうなんて、絶対にダメ。



大翔君との同居がバレちゃったら大変なことになる。



「いえ! 私ならひとりで大丈夫ですから。

それに先輩にもいろいろと約束があるでしょうし」



「オレの予定のことまで心配してくれるなんて、まりやちゃん超いい子!

そんなキミのために、今日の女の子とのデートは全部キャンセルしたから、気にせずオレに送られてよ」



え、えぇ!? そんなこと言われても困るよ。



大翔君は、今日夕飯当番だからもう家にいるだろうし、どうしよう……。