何故か麻生先輩と一緒に帰ることになってしまった私は……。
どうにか断らなきゃいけないと、先輩の後ろを歩きながら必死に考えていた。
「ねぇ、まりやちゃんはヒロ君のどこが好きなの?」
「へ?」
「だって、校内イケメンランキング3冠を達成しようとしていたオレを軽々と抜き去ったヒロ君だよ?
学校内の誰もが認めるあのイケメン君のハートをゲットしちゃうなんて、どんな子か興味あるじゃん」
先輩のトレードマークである赤フレームの眼鏡。
そのレンズ奥の瞳が細められて、慌てて目を逸らす。
近付いちゃいけないって言われてるのに、話しかけられた場合どうすればいいの。
先輩だから無視するわけにもいかないし、でも大翔君との約束破るわけにも……。
「ねぇ、ちゃんと聞いてる?
ひとりの女の子を好きってどんな感覚なんだろうね」
独り言みたいに呟いた麻生先輩は、いつもの爽やかな笑顔なんてどこにもなくて、何かを考える素振りを見せていた。