「あ、ありがとうございます」
「うん。どういたしまして」
お礼を言って立ち上がると、麻生先輩も立ち上がって私に向かって鞄を渡してくれた。
「ちゃんとファスナー閉めなきゃね」
急いでいたとはいえ、開けっ放しで歩いていた私は恥ずかしくて何も言えない。
おっちょこちょいにも程があるよ、私。
「まりやちゃん、今から帰るの?」
「え? あ、はい」
「そう。じゃ、オレも一緒に帰ろっかな」
一緒にって、どうして一緒に帰るんだろう。
あ……っ! それに、大翔君に麻生先輩には近付くなって言われてるんだった。
どうしよう!
あれこれと考えてる私を置いて、麻生先輩はスタスタと歩き出してしまった。
「帰るんでしょ? オレが送ってあげるんだから、もっと喜んでよ」
自分のペースで行動する麻生先輩に乱されながら、慌てて昇降口に向かう。