「まーりーやちゃん♪」
「ひゃ……!?」
背後から声をかけられて、ビックリした私は、肩を思いきり跳ねあがらせる。
力が緩んで、手に持っていた鞄を床に落としてしまった。
ファスナーをしっかりとしめるのを忘れていたらしく、鞄の中身が散乱してしまった。
「あ……!」
「あーらら。落としちゃったなぁ」
もう一度した声に後ろを振り返ると、3年生の教室に続く階段から麻生先輩が下りてきたところだった。
麻生先輩が急に声をかけるからびっくりしたんです。とは言えず、その場に座って散らばったペンケースやノート、タオルなどを拾い集める。
「オレも手伝うよ」
麻生先輩も自分が声をかけたことを悪く思っているみたいで、一緒に座って散らばった物を拾うのを手伝ってくれる。
「すみません」
「いや、オレが声かけたのが悪いんだし。
それに、ここは“すみません”より“ありがとう”の方がオレ的には嬉しいんだけど」
拾い集めた物を私に渡しながら、麻生先輩はニッコリと笑う。