「失礼します」



今日は日直で、職員室にいる谷山先生に日誌を届けにきた。



「おー、ご苦労さん。藤沢悪いな。

もうひとりの日直が休みだから、ひとりでやってもらうことになっちゃって」



「いえ、風邪でお休みなら仕方ないですよ」



「今から帰るのか?」



先生に日誌を渡すと、心配そうに声をかけてくれる。



「はい。今から帰ります」



「暗くならないうちに早く帰るんだぞ。

気を付けてな」



日誌を受け取った先生は、先生という表情のどこかにお兄ちゃんらしさを含ませる。



「はい。じゃ、先生さようなら」



「失礼しました」と職員室を出ると、その足で昇降口に向かう。



放課後だから校舎に残ってる生徒は少なくて、グラウンドに面した窓ガラス越しに部活動をしている生徒達の元気な声が聞こえてくる。



今日は、大翔君が夕飯当番だからご飯楽しみだなぁ。



ひとりで頬を緩ませながら、昇降口に向かう足が自然と速まる。