瞼を伏せて頷いたまりやは、笑顔で「いってらっしゃい」と送り出してくれた。
最近では、掃除の時と着替えを取りに帰るくらいしか自宅に戻らない。
数日ぶりに自宅に戻ってくると、少しの間空気を入れ換えて、光を待つことにする。
15分くらい経った頃。
インターホンが鳴った。
光だとはわかっていたけど、一応モニターでその姿を確認する。
「開いてるから上がってこいよ」
モニター越しに告げると、光は「お邪魔します」と家の中に入ってきた。
部屋に案内すると、ローテーブルを挟んでお互い座る。
「あ、これ差し入れ」
そう言って袋を掲げた光は、中からペットボトルのジュースやお茶を取り出した。
「へぇ、ここが大翔の部屋なんだ。
この間来た時は、部屋にも入れてくれなかったもんな」
「お前が急に来るからだろ。
人のことなんかいつもお構いなしなくせに」
少しは悪いと思ってるらしく、頭を掻きながら苦笑いを返してきた。