気になりつつも、普段通りに返す俺に、電話の向こう側から光が少し笑う気配が伝わってきた。
『今からさ、大翔の家に行ってもいい?
ちょっと聞いてほしいことがあるんだよね』
今からと言われて、ふとリビングの掛け時計に目をやる。
もうすぐ7時を指そうとしてる秒針を目で追いながら、椅子から立ち上がる。
「いつも人の予定なんかお構いなしのくせに、今さら何言ってんだ」
『ははっ。だよね。じゃあ、今から行くから』
光が電話を切ったのを確認して、スマホを耳から離すと、まりやが近付いてきた。
「どうしたの?」
尋ねてくるまりやの頭に、ポンッと手を乗せる。
「少し家に戻る。光が来るから。
せっかく晩飯作ってくれてるのにごめんな。
先に食べてていいよ。遅くなるかもしれないから」