よかった。
大翔君に会いにきた人じゃないと知って、ひと安心して溜めていた息をそっと吐き出した。
「なぁ~んだ。ヒロ君の浮気相手じゃなかったわけか。
残念だなぁ。
ひとりの女の子を特別に想うって素敵だと思うけど、ヒロ君はモテるんだからもっと楽しまなきゃ損だと思うよ?」
麻生先輩がつまらなそうに大翔君の肩に手を乗せる。
そして大翔君の耳元で何かをボソッと呟いて、予鈴が鳴ったと同時に教室内にいた女子に手を振って、自分の教室に戻っていった。
麻生先輩が去ったあとの廊下を大翔君が鋭く睨んでいたのが気になったけど、
途端に静かになった宮内君の様子がいつもと違うこと、それも私の中で引っ掛かっていた。