「だって、さっきそこの男子生徒A君が大きな声で騒いでたんだよ。

ヒロ君が他校の可愛い女の子に掴まったって」



そこの、と指差しされた男子は、いきなり話を自分に振られてビクッと肩を跳ね上がらせていた。



そんな麻生先輩の話に、今度は宮内君が大翔君に目を向ける。



「大翔……まりやちゃんというかわゆい彼女がいながら、他の女の子とどういうことになったのか説明し」



「うっせーんだよ、てめぇは。

さっき浮気なんてするわけないでしょって言った奴と同一人物とは思えない発言だな」



「ちょっとからかっただけでしょ。

もう、そんなプリプリしたら、イケメンが台無しだ・ぞ」



可愛げに大翔君の頬を右手の人差し指でプニッと押した宮内君に、大翔君は「チッ」と舌打ちを返す。



「キミ達が仲が良いってことはよくわかったけど、ヒロ君はその女の子に告白でもされたの?」



麻生先輩が大翔君に顔を近付けて、目を覗き込んで本当のことを聞き出そうと迫る。



教室中がその光景に目を見張り、聞き耳を立てている。



話題の中心人物の大翔君はというと、いつもと変わらずしれっとした口調で答え返す。