「ちっ、逃げられた」

「琉依は直球過ぎ」

「だって」


拗ねたように睨む琉依ちゃんの顔は凄く可愛い。
きっとサイちゃんは、琉依ちゃんのこんなところが好きなんだろうなぁ。


「でも、なんで琉依ちゃんと智くんが。……それに壱瑳くんは? いつも一緒なのに」

「壱瑳は今日バイト。最近始めたんだ。私は、紗優ねえちゃんに会いたくて、彩治にバイト先教えてもらったの」

「……智くんは?」

「私が連れてきた。欲しい本いっぱいあるから荷物持ちしてって。……騙して連れてきたの。私やっぱり納得いかないもん。ちゃんとお兄ちゃんと話し合ったらいいのにって思って」

「でも」


紗優ねえちゃんにとっては過去なんだね、ってそう指摘したのは琉依ちゃんだったのに。


「俺が提案したんだよ。ほら、前にねーちゃんの部屋から帰った時。琉依、ねーちゃんに彼氏がいるって話聞いたって言ってたけど」

「ごめんね、教えちゃったよー!」


悪びれもせず言う琉依ちゃんに対し、サイちゃんは私に真剣な顔で向き直る。


「俺はこの六年間、ねーちゃんが幸せそうに見えたことなんか一度もない」


涙が止められない。
鋭く胸の奥底に隠していた本心をつきさすようなサイちゃんの一言は、あまりに攻撃的だ。