草太くんに電話をするのは、実に二週間ぶりだ。
このくらい期間が開いてしまうと、もう気まずさばかり感じてしまう。

仕事帰りの駅前広場。
行き交う人は足早に歩いて誰も私に気を止めたりしない。

生け垣に座り込んで、おもむろに電話をかけた。

二週間も連絡しあわない恋人同士の末路なんて彼だって想像付いてはいるだろう。
きっと、今更なんだと言われるのだろうけど、はっきりお別れしたいって言わなきゃ。


『もしもし、紗優?』


五回目の着信音で出た彼の声は、少し弾んでいて予想したものとは違っていた。


「草太くん」

『……電話来るの待ってた』


安堵に包まれたその言葉に、咄嗟に襲ってくるのは罪悪感だ。

今更なんかじゃなかった。
草太くんは、ずっと待っていてくれたんだ。


「あの、あのね? 草太くん」

『紗優いまどこ? 部屋……じゃないよな』

「うん。志生駅前、だけど」

『行くよ。顔見て話そう』

「……うん」


どうしよう。
てっきり怒っているか呆れられていると思っていたのに。

電話越しからも彼の嬉しそうな様子が感じられて、戸惑ってしまう。

こんな風に喜ばれたら、きっと誰だって嬉しい。
私だって例外ではない。
だからといって気持ちが変わるわけではないけれど。

どうやって別れ話を切り出そうか。
当初考えていたよりずっとハードルが上がって、早速挫け始めている。