二度と会えないと思っていたのに、会えた。

私が付けた傷を、彼はまだ抱えているかもしれない。
私は傷つけ返されるかも知れない。

それでも、出会ってしまったなら逃げてちゃいけないんじゃないの?


周囲の雑音が頭から消えていたらしい。
目の前にお客さんがやってきて、慌てて我に返る。

会計をして、お釣りを渡して頭を下げる。

顔を上げた瞬間にはもう、お客さんはいなくなっていて、他のお客に紛れてしまった。


出会いは一瞬だ。
追いかけなければ群衆に紛れるだけ。

同じように彼をこのまま見失ったら、私はやっぱり後悔するかもしれない。


でも会いに行くには、今のふらふらした状態のままじゃ駄目だ。


「……ちゃんと言わなきゃ」


草太くんに。

智くんに再会して気づいた。
やっぱり、私が彼に感じているのは恋とはどこか違う。

孤独を救ってくれたことに、寄せてくれる愛情に、ただ甘えていただけ。


「ちゃんとお別れしなきゃ」


そうしなきゃ、もう一歩も進めない。