そのままアパートに戻って、ノートとのにらめっこを続ける。

『キラ』が私の頭の中を回っている。
主人公を案内してくれる可愛いキャラクター。

ねぇ、次に何処にいけばいいのか、私にも教えてよ。


とりあえず、思うがままにペンを走らせよう。

少年は冒険をしながら一つ一つ見つけていく。
『勇気』や『希望』や『愛』を。

そしてそれにまつわる、『不安』や『絶望』や『裏切り』を。


「ちょっと待ってよ。……これ全部身につけたら大人になっちゃう」


この設定なら、主人公は記憶を失くした大人だ。

何もかもが嫌になって、子供になりたいと願って、子供の心だけがキラの導きによってこの世界に入り込む。
旅を終えた時、主人公は大人に戻れる。


「……面白い、けどコンセプトと違うような……」


幼児向けのモノにそんな難しいテーマを入れてどうするの私。
迷走し過ぎてる。

ノートに大きくバツを書いて、再び構想を練る。

今度はもっと単純な、冒険物語だ。

世の中には沢山のおとぎ話があって、少年はその世界を旅して自分だけの物語を作っていく。

少年が最初に持っているのは『希望』の化身であるキラだけ。
沢山のおとぎ話の世界を渡り歩きながら、『知恵』や『勇気』を手に入れる。

毎回辛いだけじゃ嫌だから、楽しいだけの世界もつくろう。

そうして旅を終えた時、少年は少しだけ成長しているんだ。