翌朝、サイちゃんは部活の朝練があるらしく、私が起きた時にはもう出ていた。


「紗優。私たちも出るから。戸締まりしていってね。鍵あるよね」

「うん。ある」

「じゃあ行ってきます。英治くん、ゴミ持ってくれる?」

「ん。じゃあなサユ。また来いよ」


昨日あんなふうに話を終えたのに、表面上だけでも普段通りに話せるのは家族だからなのかな。
お母さんが気にしてなさそうなのに、私一人で意地張っているのもバカみたいだし。

慌ただしく皆が家を出て行って、私は一人家にぽつんと取り残された。

バイトは今日はお休み。
とは言え、私も構想を練らなきゃいけない。来週までにはまとめたものを山形さんに送らないと。


「少し、ここで書いていこうかな」


昔の自分の部屋にはいる。

ベッドは今の部屋に持っていったので、どことなくがらんとしていた。
学生時代から使っている机がまだ残っていて、時々誰かが座っているのか消しゴムのカスが落ちていた。

壁にくっついた本棚には昔読んでいた本やアルバム関係が並んでいる。

思い出すのが辛くて、帰ってきてもいつも見ないようにしていた。
今も、指をかけてみたものの引き出す気にはなれない。