結局、この日私はカラオケで大騒ぎした。
「アドレスよこせよ」
西崎が、テーブルに置いておいたスマホを勝手に操り、連絡先を奪っていく。
「こらー、勝手にさわんないでよ」
マイクで叫ぶ私の声に、彩治は「うるせー」って耳をふさいで。
その後調子に乗って彩治とデュエットしたり、西崎と彩治に女性デュオの曲を歌わせたりして結構楽しかった。
いつも壱瑳と一緒にいたけれど。
壱瑳がいなくても、私はこうして笑ったり楽しんだり出来る。
それは少し悲しいけれど現実であり、成長でもある。
そして、それを受け入れていきたいって思ってる自分も確かにいるんだ。
「じゃあな。琉依」
「うん。楽しかったアリガト」
「金出したの俺だぞ。感謝しろよ」
「上から来る奴は嫌い」
あっかんべーをしてやると、西崎が「ムカつく!」と私の頭をグシャグシャとかきむしった。
やめてよ、乙女が台無しだわ。
「そうやって笑ってろよ」
手が離れる瞬間そう言われて心臓がドキンと波打つ。
何こいつ。
私が元気なかったの気づいてたの?
マジマジと見つめるとその視線を避けるように目を伏せられた。
「帰ろうぜ、彩治」
「ああ。じゃあまたな。琉依」
「先に駅についたほうが勝ち」
「あ、待てよ、絆」
私を家の前まで送ってくれた二人は、競うように駅までの道を走りだした。
二人で並んでるとワンコロみたいだなぁ、なんて思いながら、私は家に入った。