「なんでって、ホワイトデーだから来たんだよ」
彩治は屈託なく笑うと私の手のひらにラッピングされた包みを載せる。
「この間財布壊れたって言ってたろ。奮発してやった」
「えっ」
慌てて開けてみると、前々から狙っていたコンパクトなお財布があった。
ノーブランドだけど、オレンジ色が可愛くて。そういえば壱瑳にこれ可愛いって叫んだかもしれない。
「そんな高いのもらえないよ」
「そうだぞ。コイツがくれたの板チョコだろ。彩治は人が良すぎる」
確かにそうなんだけどうるさいんだよ。
なんでついてきたよ西崎。
「いいよ。冬休みの短期バイト代も残ってたしさ」
「……ありがとう」
素直にお礼を言うと、今度は西崎が言った。
「じゃあカラオケ行こうぜ?」
「は?」
「俺からの返しはカラオケ。お前の分おごってやっから。男二人でホワイトデー過ごすのも何だから誘いに来てやったんだよ。ありがたく思えよな」
「はぁ? 何を上から」
「まあまあ。いいじゃん。歌うとすっきりするぞ、琉依」
確かに、一人で家にいても悶々と考えこんじゃうだけだけどさ。
カラオケも好きだから誘いも嬉しいけどさ。
どーして西崎はこう可愛くない言い方しかできないんだろ。