夕飯は鍋にしようってきめて、紗優ねえちゃんと一緒に材料を買いに行く。
帰ってきたら、彩治とお兄ちゃんがゲームをしていた。
全く、いつまでたってもゲーマーな二人なんだから。
夕飯準備をしながら、私はこっそり紗優ねえちゃんに聞いてみた。
「紗優ねえちゃん、お兄ちゃんにチョコあげなかったの?」
「うん。甘いもの苦手だしね。でも別にバレンタインをしてないわけじゃないよ。今年はピザあげたし」
「でも、やっぱチョコがいいじゃん。お約束でしょ。紗優ねえちゃんの手作りなら食べると思うよ。私だって柿の種チョコあげたし。食べてたでしょ?」
「うん。……でもいいの」
あれ?
この頑なな感じはなんだろう。
たまに紗優ねえちゃんってこんなときあるよね。
自分の殻にこもるというか、意地はってるっていうか。
「……あげたくない理由があるんだね?」
「な。無いよっ、別に」
「うっそだー。なんかやましい顔してるもん」
敢えてふっかけてみると、紗優姉ちゃんは眉を下げた。
「……だって。嫌々食べられたくないんだもん。それに昔、他の女の子からチョコもらったとき、私に食べてって言われてちょっとショックだったんだから。だから私は絶対あげない」
「……あー」
なんだ、ちょっとヤキモチが絡んでるのか。
拗ねてるのに、お兄ちゃんが気づかないから余計意固地になってるのかな。
「来年はあげなよ。きっと食べるってお兄ちゃん」
「……別にあげてないわけじゃないもん。違うものあげてるもん」
「はいはい」
意地っ張りだなぁ。
いずれ結婚もするんだろうに、そんなに意固地になってどうすんだか。
まあいいや。
お兄ちゃんには悪いけどしょせんは人事だしな。
「さ、だいたい準備出来た。お兄ちゃんも彩治もゲームおしまい!」
大声をあげて、会話を終了する。