「そういや、琉依はお返し何が欲しい」
「え? 私も食べるものでいいから。ケーキがいい。『ショコラ』のケーキ美味しいからあそこで買ってきて」
「分かった分かった」
やった。ケーキゲット。
ってそうじゃないよ。
すぐ話がずれちゃうのは私の悪い癖だな。
「ちなみに、甘いもの嫌いを知ってる紗優ねえちゃんは今年何をくれたの?」
「紗優? 俺にはピザ焼いてくれたな。そして手作りのチョコレート……を、俺にだけくれなかった」
「は?」
「甘いもの苦手だもんねぇって。彩治とおじさんに持って行ってたけど。いやでも一個くらい食べるよって言ったのに、頑なにくれない」
「お兄ちゃんなんかしたんじゃないの」
「いや? でも高校の時からチョコはくれないぜ? 毎年手作りしてるみたいなのに、甘いもの嫌いでしょって言って。……もらった義理チョコは食べろって言うくせに」
「実は嫌われてんじゃないの」
冷たい一言を投下して、私は立ち上がる。
「やっぱり帰る。紗優ねえちゃんによろしく」
「お前っ、俺にダメージだけ与えて帰るなよ」
「だって。お兄ちゃんと話してても実が無いもん」
壱瑳のことが、気になって仕方ないし。
部屋に忍び込んで、探しちゃおう。
「じゃあね」
「おい、琉依」
「きゃっ」
扉を開けた瞬間に、紗優ねえちゃんの声がした。
「……あれ、琉依ちゃん」
「おー琉依」
そしてその後ろに彩治までいる。
「あれ、彩治一緒だったのか?」
奥から出てきたお兄ちゃんが手招きする。
「本屋に来てくれたの。琉依ちゃんもいるなら皆でご飯食べよ」
その紗優ねえちゃんの提案で、私は家に帰るタイミングを逃してしまった。