「高校生だって色々悩みがあるんだよ」
「まああるよな。俺だってあったぞ?」
「お兄ちゃん、高校生の時バレンタインチョコもらったことある?」
「あ? あー。……あるよ? 一応。その時紗優と付き合ってたし」
「何をお返しした?」
でも付き合ってたんなら参考にならないかな。
私が知りたいのは、女の方は義理かもしれないけど、返す男のほうが本気な場合のチョイスする品物……つまり壱瑳が返すものなわけだけど。
「紗優には画材やったな」
「画材? 色気ないね」
「でもアクセサリーよりそっちの方が喜んだし。結構高いんだぜ? 紗優が全色揃えたいけど、いっぺんには買えないからってちまちま買ってるの見て。何かのイベントの度にペンとかパステルとか何本かずつあげてた」
「実用的だなぁ」
ああもう、全然参考にならないな。
「じゃあ他。義理チョコは? もらってないの?」
「琉依からもらった」
「私のは省いて!」
「もらって、……ねぇなあ。俺と紗優付き合ってるの、隠してなかったから皆公認だったし。わざわざよこす奴なんて……あ」
「あ?」
お兄ちゃんの声音が変わった。
何か思い出したな。あるんじゃん、その話が聞きたい。
「あるのね? 義理チョコ。紗優ねえちゃんに内緒で貰ったの?」
「あー、うん。そういえばあった。義理……チョコかな、あれは」
「ちょっと詳しく教えてよ」
「でもなぁ」
「私の知らない人でしょ? 別に吹聴したりしないし。参考にしたいだけ」