とその時、頭の上からボソリと声が聞こえた。


「お返しお返しってがっついてんなー」

「あ、西崎くん」


明桜ちゃんが顔をあげて笑う。

愛想振りまかなくていいよ。
コイツは口が悪くて態度もでかい嫌な男なんだから。


「女ってさ、お返し目当てでチョコ渡すわけ?」


チラリと私を見るなよ。
別にアンタからのお返しなんていらないんだから。


「そりゃ、期待はするよね。ねぇ、琉依?」


明桜ちゃん、それ今言わなくていい。
てか、あなたの常識を私に当てはめるのはやめてください。


「ふうん、あっそ」


通りぬける時に、肩のあたりにコツンとあたった指。
なんなのよ、嫌がらせか。

明桜ちゃんはニヤニヤと私を見る。


「西崎くんって、結構琉依のこと構うよね」

「あれは構うんじゃなくていじめているのよ。私と彩治の友情を引き裂こうとしてるんだから」

「あはは。……でも分かるかも。あれじゃあ彩治くん可哀相だもん」

「なんでよ」

「だってさ。告られたんでしょ?」


そうだよ。
でも私にとって彩治は友達だ。

ただの友達じゃないよ。親友。
簡単に切れる絆じゃないと思ってる。