なおも詰め寄ってくる颯くんは、近くで見るとまつ毛も長くて本当に格好いい。
確かに、一般的にイケメンと称されるのは颯くんだろうけど、私はゆっくり首を振った。


「私には、智が一番格好いい」

「ほら見ろ」

「いやでも一途さでいったら俺ですよ。なんてったって中学からずっと紗優ちゃん先輩のこと好きだったんですから」


今度は信也くんに引っ張られる。
智は、信也くんの襟元を掴んだ。結構本気で怒っている。


「ざけんな。お前さっき彼女に振られたばっかりとかほざいていただろうが! 俺なんて歴代彼女は紗優だけだぞ。紗優に何十年片思いしてたと思ってるんだよ。一途さで俺が負けるはずがない!」


彼の怒号に周りがしんとなる。


「何……十年って。お前二十四だろ? 何年じゃなくて? 十何年でもなくて?」


木下先生がボソリという。


「足掛け二十年です」


智の答えに周囲がどよめいた。


「マジで? ありえねぇ!」

「保育園からずっと片思いだ。これでもお前のほうが一途だって言うのか?」


大声で言い切ってくれた彼に顔が熱くなる。


「いや。さすがに……。つか、それはそれで引く」


信也くんがポロリと本音。