皆の空白の時間を聞いているだけで、時間なんてあっという間に過ぎてしまう。

その内に、言い合うような声が聞こえてきた。
振り向いてみると、颯くんと新見さんが、向かい合って睨み合ってる。


「だーかーらー。どうしてお前はそう生意気なんだよ」

「上から目線でみてるから生意気とか思うんでしょ。言っとくけどね、私は別に颯がいなくったって平気なんだから」

「俺だって、明菜じゃなくたっていいよ、別に」


綺麗な顔は怒っていても美しい。
私達は魅入られてしまったみたいに、彼らから目を離せない。

やがて二人は肩を叩き合い、場を騒然とさせていく。


ど、どうしよう。

チラリと隣の智を見ると、「仕方ねぇなぁ」と立ち上がった。


近づいてきた智の腕を、新見さんが掴んで引っ張る。


「颯に比べたら、中津川くんの方が数倍格好いいわよ。なんだかんだ一途だし? 正直者だしね。」


心臓、ざわり。
智くんの隣に、綺麗な新見さん。まるで恋人みたいに腕を組まれたら、私の余裕は一気に無くなる。


「あっそー。俺だってお前みたいな口答えばっかするようなのより、さっちゃんのほうがいいもん」


颯くんはそう言うと、座っている私の両肩に手を載せ、エスコートするようにして立たせた。