「紗優、変なとこ頑固なんだもん。私がいくら諭したって聞いてくれないしさ。その点、智くんはいつまでも未練たらしくて諦めないからいいじゃん」
「……和奏先輩、それあんま褒められた感じしない」
智と和奏も久しぶりに会うはずなのに、会話のテンポは学生の時みたい。
こうやって、一瞬であの頃に戻れるのって凄く嬉しい。
今日の会の出席者は、主に高校の時の友達だ。
それほど人数も多くないので、個室を借り切ってにしているそう。
やがて、一人の男の人が顔をだす。
「和奏先輩、大体揃ったけど。……お、智、来てたのか」
彼が入ってきただけで雰囲気が変わる。
濃いブルーのシャツは広い肩にぴったりと合い、センター分けの黒髪はところどころワックスで固めてあって、しかもそれが自然に似合う。まるで芸能人みたい。
「葉山先輩も久しぶりー。あ、もう葉山じゃないのか」
颯くんはチラリと智をみやると、それは楽しそうに笑った。
「じゃあ、なんて呼ぼっかなー。紗優先輩でいいっすか? それとも紗優さんかな。もういっそさっちゃんとかどうでしょ」
「さっちゃんって呼ばれたことない」
「じゃあこれにしよっかな。俺だけのアダ名」
「調子に乗るんじゃないわよ、颯」
ズコッという鋭い音に、私達は彼の後ろに目をやる。
多分声から言って間違いないと思うけど、新見さんだろう。