「萱森さん。今日、残れる？」


「はい。大丈夫ですけど…田辺くん、どうしたの？」


夕方５時を過ぎた時、藤沢さんと田辺くんが来た。田辺くんは両手を顔の前で合わせて、ごめんなさいのポーズをしている。

何かやってしまった？どんな失敗を？で、私は何を頼まれるのだろう。


「明日、打合せに行くのにまだ準備が終わってなくてさ。あと１時間半くらいはかかりそうなんだけど、田辺が残れないって言うからさー、なあ？」


「うわー、ごめんなさい。月曜日から残業になると思わなくて、歯医者の予約を入れてしまつて…今日、行かないと２週間先まで予約がいっぱいだから、変更できなくて。葵、ごめん！」


「ううん、大丈夫だよ。私は予定ないから、残れるし。藤沢さん、大丈夫です」


「じゃ、今やってるのが終わったら、声かけて。ほら、お前はギリギリまで、しっかりやれよ」

藤沢さんは田辺くんの耳を引っ張って、自分のデスクに戻っていった。田辺くんはしょんぼりしていた。