「ん…、んー」


小島さんの少し悩ましい声が聞こえてくる。それも真横からだ。資料室へと通じる横道。

いた…。

小島さんがこちら側に背を向けているけど、藤沢さんの顔ははっきりと見えた。薄目でキスをしている。あんな表情をするんだ。

見ていてはいけないと思うのに、私はここから動けない。

藤沢さんの目がしっかりと開かれた。二人が少し離れたことでキスが終わったことが分かった。

開いた目が私を捉えた。見ていたことがばれた。やばい、逃げなくては…。そう思ってはいても合ってしまった目が逸らせない。


藤沢さんは私を見たままで、もう一度小島さんにキスをした。小島さんの腕が藤沢さんの首に巻かれる。さっきよりも密着して、さっきよりも深いキスになっていた。

しかし、藤沢さんの目はまだ私と合っていて、私を見たままだ。なんでずっと見ているの?


コツコツ…


ヒールの音が聞こえてきた。誰かが近付いてくる。