頭を下げようとした時、小島さんが入ってきて、私は中途半端なところで止まってしまう。小島さんはわき目もふらず、真っ直ぐ藤沢さんのデスクへ行く。


「今日はまだやるこもあるから、先に帰って」


「分かった。じゃ、ちょっとこっちに来て」


藤沢さんは仕事を中断させて、小島さんと一緒に廊下へと出ていった。大事な用事でもあるのかな?私の気にすることではないのに、二人の姿を目で追ってしまう。

つい気になってしまうのだ。


「お先に失礼します」


「お疲れさま」


私は、改めて挨拶をして、ロッカー室へと廊下を歩く。


「ねえ、キスして」


「ここで?会社だよ」


「いいでしょ?一緒に帰れないんだもの。それにみんな、まだ仕事していて誰も通らないわよ、」


前方から聞こえてきた藤沢さんと小島さんの会話に私は、耳を塞ぎたくなる思いもしたが、やっぱり気になってしまって…声がする方へと足音を立てないで歩みを進める。

まさか…本当にキスをするのか?