「葵ー。疲れたよー。癒してー」


「わっ、田辺くん。びっくりしたー」


榎本さんの話を真剣に聞いていたから、隣のテーブルに田辺くんが来たことに全然気付かなかった。


「クスッ、お疲れさま。藤沢くんは、そんなに厳しいの?」


「あの人、研修の時から俺にだけ厳しいんですよ。あ、 もしかして俺のこと、好きなのかも!愛情の裏返しでつい苛めてしまうとか?きっと、そうだ!」


「おい、勝手なこと言うな。俺は男になんか興味ないぞ。ノーマルだから」


噂をすればで、またしても藤沢さんの登場だ。本当に所々でよく現れる。だから、いつまで経っても簡単に思いが消えない。

姿が見えないところに行ってしまわないかな。再会しなければ良かったかもしれない。


「萱森さーん?また考え事?」


「ああ!ごめんなさい!なんですか?」


顔の前で手を振られて、目の前の榎本さんからの声に気付く。またやってしまった。