「ほんとに入るのかよ?」


ここまで来て、なぜか幸紀さんは躊躇っていた。


「どうしたの?おいでよ。来て!」


私は一歩前に出て、幸紀さんの右手を両手で持って、手前に引き寄せた。


「わっ!」


「え…ちょっと危ない…」


バシャーン!


「あーあ」


「なんでだよー」


腕を引いた時にバランスが崩れて、二人揃って、きれいな海の中に倒れた。下半身はびしょ濡れだ。

温かいと感じていた水が段々冷たく感じてきた。


「葵、冷たいんだけど」


「うん…冷たいね」


「ほら、立てよ。いつまでも座っていたら風邪引くから」


先に立ち上がった幸紀さんが手を差し出す。


「ごめんなさい」


自分のとってしまった行動が浅はかだったと反省するしかない。


なでなで…こんな時でも幸紀さんは、優しい。