言葉を濁して、逃げたのかと思った。あの日はあのあと、ずっともやもやしていた。気持ちが宙ぶらりんな感じになってしまった。


「なんかさ、葵をすごく大事にしたいと思うんだよ。誰にも渡すつもりもないし、幸せにするのは俺しかいないと思うんだ。だからかな、つい言葉に出てしまう。それで、何でこんなとこで言ってしまったんだと我に返って、そ恥ずかしくなるんだ」

だからって、逃げなくてもいいと思う。


「ふふっ」


「なんで笑うんだよ。笑うとこじゃないだろ?」


藤沢さんが私の頭を小突く。


「ふふっ、だってー、嬉しいなと思って」


そこまで自分のことを思っていてくれるなんて、嬉しすぎて頬が緩む。体も嬉しくて、ふわふわ浮きそうだ。


「そうそう、葵はいつ言ってくれるの?いつ気持ちを教えてくれる?俺ばっかり、ずるいじゃないか。早く教えてよ」