今度は耳元でそっと囁く。ここは、新幹線の中だ。早いスピードで外の景色が変わっていく。こんなとこで告白されるなんて、予想外だ。

藤沢さんを直視出来なくて、失礼だとは思うけど、私は窓の方を向いた。


「何で、背中向けるんだよ。こっち向けよ」


まずい、こっちを向いたのは失敗だった。何で私は背中を見せてしまったのだろう。背中に自分ではない熱を感じる。藤沢さんが後ろから抱き締めてきた。


ちょっと、待って…ここは、新幹線の中。私たちの席は車両の一番後ろだけど…通路挟んだ隣のおばさんが見てるよ。目を丸くしたおばさんの顔が窓ガラスに映ってる。

恥ずかしすぎる。しかし、藤沢さんはそんな私の気持ち知らずで…


「夜がとても楽しみで、待ち遠しい」


この場に合わない妖しい言葉を囁いてくる。


「葵?」


「はい」


「葵の気持ちも聞かせてよ」


ええ?これ以上恥ずかしいことしたくないし、出来ない。