「1人で行けますから、これを伊藤さんと課長に渡してもらえますか?」


私は何とか取ったファイルを藤沢さんに差し出した。


「あれ…藤沢さん?」


受け取らない藤沢さんを不思議に思って見ると、私のおでこ辺りを見ている。目で見ても分かるくらい腫れているのかな?みんなに気付かれたら恥ずかしいから、早く冷やしてこよう。

しかし、藤沢さんが動かない。


「ここ、切れてる。血が出てる」


「え?血?」


どこにぶつかって切ったのだろう?切れるものなんて見当たらない。


「わっ…ちょっと…汚いですよ」


おでこに生暖かいものを感じた。その正体は…


「舐めれば良くなるよ」


「そんな…今どき…」

っていうか、何で舐めてるの?藤沢さんの舌が生暖かい物の正体だ。


カァ…


「あれ?葵、大丈夫?顔が赤くなってきてるよ」


「大丈夫じゃないですよ」


私はその場に座り込んでしまった。こんな状況に置かれて大丈夫なはずはない。何をしてくれるの?藤沢さんの顔が見れない。