え?お兄ちゃんが聞いちゃうの?

ちょっと、待って…心の準備が…。私は胸を手で押さえた。心臓がドキドキしてくる。

藤沢さんはお兄ちゃんの方をしっかり向いた。何を言うんだろう?


「そんなこと渉さんには言いませんよ。さて、俺は帰ります。まだ二人は飲みますか?」


「いや、俺は、もう少しいるよ。葵もいるだろ?一緒に帰ろう」


「あ、うん」


ええ?ここで帰ってしまうの?ドキドキして…待っていたのに言わないの?


「じゃあ、このくらいあれば足りますかね?」


藤沢さんは財布から一万円札を2枚取り出す。


「幸紀、いいよ。今日は俺が出すから」


お兄ちゃんが渡されたお金を返す。


「いや、でも、出します」


「じゃ、1枚でいいよ。足りなかったら、俺が出すから。ありがとう」


「いえ、こちらこそありがとうございます。ごちそうさまでした。葵ちゃん、おやすみ」


「はい、おやすみなさい。気をつけて帰ってくださいね」