お兄ちゃんはもう一度、藤沢さんを叩いた。


「もう、今度は何ですか?食べてる邪魔しないでくださいよ」


少し頬を膨らませる藤沢さんもかわいい。何か初めて見る顔ばかりでおもしろい。


「葵、何をにやけているんだよ?」


「ん?にやけている?」


やばい。つい緩んでしまった顔をお兄ちゃんに見られた。藤沢さんもこっちを向くし。手羽先に集中していていいから、こっちを見ないで。

緩む頬を手で押さえた。


「えー、にやけてなんかいないよ。私も手羽先、食べよう」


「うん、うまいから食べなよ」


「ありがとうございます」


藤沢さんが取り皿に置いてくれた。さあ、食べよう。お兄ちゃんはひとまず放っておこう。


「幸紀。お前さ、葵とこんなとこに来てないで、彼女とデートしろよ」


「彼女?あー、今日、別れましたよ」


「はあ?別れた?しかも、今日?」