そうだった…小島さんと別れ話をしていたよね?大丈夫なの?


「え?ああ、もう話は終わりましたから」


ええ?終わった?あれで終わったの?


「幸紀!」


小島さんが足音を大きくして、こっちに向かってくる。顔は怒りに満ちている。この状況だったら、怒るのも当然だ、


「由里、まだいたんだ」


とぼけた顔をする藤沢さんの頬にビンタが飛んできた。


「いてっ」


「私をバカにしてるの?幸紀なんて、大嫌い!」


目に涙を浮かべながら言うその言葉は「大嫌い」ではなくて、「大好き」に聞こえた気がする。


「ごめん。もっと早くに言うべきだった」


「私のこと、好きじゃなかったの?」


「ごめん…」


自分の非を認めた藤沢さんはただ謝った。


「分かった。別れる。幸紀なんて、もういらない」


藤沢さんは小島さんの所有物だったのか?おもちゃでも捨てるかのようだ。小島さんは真っ直ぐ前を向いて、出ていった。

緊迫した空気だけが残る。気まずい。