「ロビーで待っていても来ないから、迎えに来たんだよ。そしたらさ、こんなおもしろいことが見えるとはねー、驚いたな。ね、萱森さんもびっくりだよね」


びっくりって、伊藤さんの登場にもびっくりしたんだけど。それに、同意を求められても困る。話し掛けないで欲しい。


「伊藤さん、萱森さんに何の用ですか?」


え?藤沢さん…何でこっちに来るの?小島さんを置いたまま、こっちに来ていいの?


「ちょっと…幸紀…」


小島さんが悲しそうな声を出す。二人は話の途中だし、置いていかれる小島さんがかわいそう。こっちに来なくてもいいのに。


「藤沢に用はないけど。萱森さんが約束の場所に現れないから迎えに来ただけ」


「約束なんてしてないです」


してない約束をしたと言われるなんて、度肝を抜かれる思いだ。しっかり否定しないと。


「萱森さんは約束してないって言ってますよ。付きまとわないで帰ったらどうですか?」


「藤沢には関係ないだろ?お前、小島さんと話していたじゃないか?いいのかよ、彼女を放っておいて」