資料室の中は把握している。資料を探すのには時間がかかることはなかった。今だって、すぐに手にすることが出来た。


「じゃ、何してたの?何か考え事?困ったことでもあった?」


「あ、いえ。ボーッとしてしまっただけで、戻りましょうか?」


ドアに手をかけた。やっぱり少し残業していこう。行かなければ、伊藤さんだって、諦めるだろう。一応断ったから、待っているかどうかは分からないけど、危ないことは避けたほうが無難だ。


「葵、まだ帰らないの?」


「うん。もう少しやっていく。田辺くんは帰るの?」


「うん、今日が最後の歯医者なんだ」


「あー、やっと終わるんだね」


歯が痛くて歯医者に行ったら、3本も虫歯が見つかったそうだ。歯医者は治療が全部終わるまで時間がかかるから、大変だ。


「じゃ、お先に…」


「幸紀ー!」


「うわっ、びっくりした」

田辺くんが出ようとしたら、小島さんがすごい見幕で入ってきた。何事?