そう、思い込みたかった。変な誤解をされたくない。私の気持ちだってあるし。


「私は、いますよ」


「やっぱりいるんだ。そんな雰囲気あるもんなー。藤沢さんは、いるんですか？」


田辺くんが自然な流れで、藤沢さんにも聞いてくれた。


「ん？俺？俺は…」


「藤沢さーん。矢崎さんが呼んでますよー」


松本さんが入り口から藤沢さんを呼んだ。私たちは入り口に目を向ける。そこにはきれいな巻き髪をした女性がいた。


「ごめん、ちょっと出てくる」


どなた？藤沢さんとどんな関係？仕事の用事なのかな？藤沢さんが出ていって、ドアが閉まる。


「松本さん、さっきの矢崎さんて、藤沢さんの彼女ですか？」


田辺くんは遠慮のない男だと思う。でも、私も疑問に思っていることを聞いてくれるから役に立つ。


「違うよ。矢崎さんは、藤沢さんと同じ営業部の人で確認したいことがあるらしくて来たんだよ」


違うんだ。


「でも、藤沢さん、彼女いるよ」