「なんだよ、あの人。葵、伊藤さんに気に入られてるの?」


伊藤さんの口調は気に入っている口調ではないけど、言い寄られているのは確かだ。


「よく分からないんだよね」


本当によく分からない。好かれているようには思えないし。ただ近寄ってはいけないことは分かる。


「萱森さん、パッケージ取りに行ってくれてありがとう。伊藤さん、大丈夫だった?」


藤沢さんは夕方に取引先から戻ってきた。


「はい…」


「どうした?何かあった?」


「いえ、あの、疑問なこととかあったら、伊藤さんに聞いてください。あと、決まったら連絡してください。私、資料室に行ってきます」


伊藤さんから預かったファイルを渡して、私は資料室に行く。明日、課長と打ち合わせに出る準備をするためだ。

資料室に入り、目的のものを探さないで、隅に置いてある背もたれのない丸いパイプ椅子に座る。