え?私は今、断ったはずだけど、聞き間違えた?それともわざと?


「失礼します!」


「あ、田辺くん…」


「そちらがサンプルですね。葵一人では持ちきれないから、手伝うようにと志田課長に言われた。葵、行こう」


田辺くんのタイミングの良さにはいつも救われる。

田辺くんは大きな段ボール箱にテーブルに並べられていたサンプル箱を入れる。私は包装会社からの見積書等が入ったファイルを持って、伊藤さんに頭を下げた。


「ありがとうございました。あとは、藤沢さんから連絡が行くと思いますので、よろしくお願いします」


「藤沢はいらない。萱森さんが連絡してきて」


「はい?この担当は藤沢さんですよ?」


田辺くんが伊藤さんを怪訝そうな顔で見る。


「そんなのは知ってる。萱森さんを指定しただけだよ」


伊藤さんはすぐに背を向けて自分のデスクへ行く。やっぱり自分勝手な人だ。