「こんな箱はあまり見ないですよね。なんか優しい感じで…」


「萱森、今夜空いてる?」


「はい?」


人が真剣に感想を述べているというのに、仕事とは関係のない話?この人は本当によく分からない。


「明日、休みだし、朝までどう?」


周囲に聞かれたはまずい話というのは心得ているらしい。だから、顔を私に近付けて低い声で聞く。それにしてもここは会社だ。こんな誘いをされるところではない。


「お断りします」


「固いねー。あいつから何か言われた?」


「あいつ?」


「藤沢だよ」


あの日、苛立っていた藤沢さんは「パッケージの件は俺一人でやるから」と言った。

守ってもらえたのかなと思ったけど、こうして私が一人でここにいることは…守ってもらえていないな。

「別に何も…」


「ふっ、ならいいじゃん。帰りにロビーで待ってるよ」