痛い…藤沢さんの掴む手に力が入った。苛立っているようだ。


「ん?葵、何かあった?」


販売課に戻って、やっと離してくれた。少し痛む手首をさする私の様子が変に見えたのだろう。田辺くんが心配そうな顔をする。


「な、何でもないよ」


伊藤さんと藤沢さんが怖かったとは言えない。


「なら、いいけど、いつでも言えよ。何でもいいから」


肩にそっと手を置く田辺くんの優しさに心が落ち着いてきた。不敵な笑いをする伊藤さんも怖かったけど、苛立つ藤沢さんも怖かった。

あの二人は前から仲が良くないのかな?伊藤さんにはもう関わりたくない。あの人は絶対に危険人物だ。用があっても近寄りたくないくらいだ。企画課にも出来るだけ顔を出さないようにしよう。