静かなところで働くのは私に向いていたかったと思う。販売課で良かったのかな?


「伊藤さん、今、いいですか?」


「うん。すぐに行くからそこのミーティングテーブルで待っていて」


伊藤さんは藤沢さんの2年先輩で私の教育係になるはずだった人だ。ちょっと目付きの悪いイケメンさんだ。


「決まったのか?」


「はい。これに決まりました」


小島社長が選んだのは、通常の3分の1のバウンドケーキ五種類の詰め合わせだった。あくまでもバウンドケーキにこだわり、マドレーヌは余分だと判断した。


「ふうん、なるほどね。で、小島社長の希望は?」


「パッケージに関しては、一任すると言ってくれました。伊藤さんのイメージで良いので、何点か作ってもらえますか?その中から相の森さんに選んでもらいます」


「俺に任せるわけか。ふうん、まあいいけど」


伊藤さんは腕組みをして、菓子箱の中から1つバウンドケーキを取り出した。

「個々の包装はこんな感じでいいよね」


「そうですね」