お兄ちゃんと結婚しないで、他の男と結婚するなんて酷すぎる。お兄ちゃんを何だと思っているの!


「あはは、何で葵が泣くんだよ」


「だって、お兄ちゃんがかわいそう…ひどいよ」


お兄ちゃんが泣かないで笑うから、私が代わりに泣く。二人ともお似合いで憧れのカップルだったから、私までもが裏切られたくらいショックだ。


「うん。でも、仕方ないことなんだよ」


仕方ないの一言では片付けられない。お兄ちゃんは泣く私の頭を撫でる。

悲しいのはお兄ちゃんのほうなのに、気遣ってもらうなんて…申し訳ないけど、涙が溢れてくる。


「ごめん。お兄ちゃん、私が泣くことじゃないよね。うん、仕方ないことだ。お兄ちゃん、もてるからすぐに新しい彼女が出来るよ。もっといい人がいるから、大丈夫だよ」


泣くのではなくて、励まさないといけない。でも、涙が止まらない。


「あら?何で泣いてるの?渉、どうしたの?」


お風呂から出てきたお母さんが泣く私も見て、目を丸くした。